2017年5月31日

発酵(ルヴァン)種の管理

5月に入って、気温20度~25度で、ほどよく湿度があって、発酵にはよい季節到来です。ここのところ、美味しいパンが焼けてまして、焼くたびに「今回が今までで一番美味しい!」と思ってます。

写真に写るパンの表情もよくなっている気がしてます。定番のライ麦10%ブレッドです↓



パンを焼く手法をちょっとづつ改良してまして、「これが正解かもな」と思うことがいくつか見つかったので、ご紹介しておきます。

まず、酵母の管理についてです。

私のパンは、ミカンから野生の酵母を培養して、その酵母菌に粉と水を栄養して与えながら、管理しています。これはハードルヴァンと言われるパン種です。かれこれ1年半以上発酵し続けている種です。かなり安定して、強くなっていると思います。

ルヴァン種は水分量が100%以上あるなど、液状のドロドロな状態↓で管理している方が多いです。


これは「リキッドルヴァン」と呼ばれてまして、全粒粉を入れる場合が多いので、ちょっと灰色がかってます。

一方、私のルヴァン種は、全粒粉ではなく、強力粉を使っているのが特徴です。水分量も粉に対して60%しか入っていません。なので見た目も白くて、パン生地のようにふっくらしています。中種のような見た目です。


パンの教本を読んでいると、大抵の場合はリキッドルヴァンが紹介されているので、ハードルヴァンでパンを焼くのはちょっと珍しいのかもしれないです。

ハードルヴァンの特徴として、私が理解したのは下記の2点です。

・酸味の管理が、リキッドに比べると容易
・酵母は、ミキシングをしてグルテン形成させているのでふっくらしたパンが焼ける
 (リキッドルヴァンを使うことに比べてパンの骨格がしっかりできる)

ルヴァン種のパンは乳酸菌のお陰で旨みが強くなる一方で、独特の酸味を持ちます。
私はこの酸味があんまり得意ではなくて、できる限り抑えたいと思ってます。

リキッドルヴァンで管理していると、どうしても酸味がでる傾向が強くなりました。発酵時間と温度、低温保存の方法で調整すれば、酸味の管理ができるようですけど、3日間冷蔵庫で酵母を保存する自分にとっては、リキッドルヴァンで酸味を抑えるのが難しかったのです。

一方ハードルヴァンは3-4日冷蔵庫に入れておいてもそこまで酸味が強くなりません。。。水分量と乳酸発酵には関係がるのかもしれないですね。


家庭用のミキサーで

粉100
水60
発酵種100

という割合で捏ねて、管理しています。

ミキシングすると、パンの骨格形成に寄与する「グルテン」ができます。この酵母の段階でグルテン形成をすることで、焼成したパンのボリューム(ふっくら焼く)を出すことができるのです。全粒粉のふすまはグルテン形成を阻害するらしいので、酵母は強力粉で育ててます。

リキッドルヴァンで焼くパンは、食感が重たくなる傾向にあるので、ルヴァン種を使っているといいながら、ドライイーストを添加してボリュームを出しているパン屋さんも多いのが現状です。

ハードルヴァンでパンを焼くと、ドライイーストを入れなくても、ふっくらしたパンが焼けます。


それから最近気づいた重要な発見は、ルヴァン種を発酵させたら、一晩冷蔵庫で寝かした方が圧倒的に香りがよくなるということです。味わいもよくなります。

前に何かで読んだことがあるのですが、発酵中に出てくるガスは健康的によくないようですし、発酵直後の香りはあまり食欲をそそるようなものではありません。

でも一晩寝かせて、酵母の匂いを嗅ぐと、ミカンのような柑橘の匂いがするのです。これは、酵母の匂いを嗅いだ人で、「わっ、みかんの香りがする!」と言った人が何人もいるので、酵母自体に柑橘的な要素があるのだと思ってます。

一番最初にミカンから酵母を起こして1年半以上みかんの皮とか果汁とか加えていないので、ミカンを感じる訳がない!と個人的には思っていたのですが、最近は「みかん酵母にはミカンを感じさせる何かが含まれているのだ」と思うようになりました。

これは、これまで色んな酵母菌(ホシノ、アコ、白神こだま酵母、とかち野、サフ等)を使う中で、それぞれに違った香りを持っていることからも、ミカン酵母には固有の香りがあるのだと確信してます。


ちょっとマニアックなことを書きましたので、意味不明な部分もあるかもしれませんが、パンと酵母の関係にご興味がある方は、「料理通信6月号」↓を読むことをおススメします。


日本の名だたるパン屋さんが、写真付きで発酵のプロセスを紹介しているセンセーショナルな内容になっています。

これを読むと、製パン技術とか、酵母の管理方法がオープンソース化しているように感じます。IT技術と同様に、オープンソース化しはじめると、そこからの技術革新とか、普及率とか格段に上がっていくと思うので、まだ日本ではマイナーなルヴァン種を使ったパンが一般的に受け入れられるようになる時代は遠くはないでしょうね。

東京の老舗天然酵母パン「ルヴァン」の甲田さんが、ルヴァン種を使ったパンを日本で焼き始めたのが33年前。これ以上ないと思うパンが焼けるようになったら、自分のパンを持って甲田さんに会いに行くのです。。。甲田さんに会うのを勝手に想像して、ドキドキして、頑張ろうと思って。。。不思議な存在ですね^^


前にご紹介したブーランジェリ・ドリアンの田村さんも、ブリオッシュのレシピと作り方を惜しげもなく紹介されてます。

これから、日本のパン業界は益々盛り上がっていきますよ~!

2017年5月15日

イベント出店と新商品開発

3月24日にイオンモールパンのマルシェに出店してから毎週末イベントや道の駅でのパン出店があったりして、5月14日まで休みなく働きました。体を壊したり、寝込んだりせずに、乗り越えられて本当によかったです。上出来でした。

この1ヶ月半で使った強力粉の量は220kg!
普通のパン屋さんからしたら全く大したことない量でしょうけど。。。平日公務員をしながら、週末だけで使った粉の量としては結構頑張った感があるのではないかと。

みかん酵母の発酵種を使ったパンに関しては同じ種類を焼き続けているので、だいぶパンのことが分かってきたように思います。楽しいです。体力的にはしんどいけど、ひたすらに楽しい。

そして、パンは美味しくなっていると思います。

酵母が成長しているから?
適切なタイミングで、適切なことができるようになったから?
発酵温度が安定してきたから?

理由は色々とあると思いますが、製パン技術は順調に身についているようです。

ベースとなるパンの方向性がいくつか見えてきたので、これからはそのパンをどのようにアレンジするのかを考える必要があります。

発酵種のパンを小さく焼くと、硬くて食べ難いパンになるので
基本はローフで焼いたものを加工するような方向性になるのではと考えています。

イベントで出店した調理パンをいくつかご紹介します。



個人的に、一押し商品だった「猪リエットのホットサンド」。
ほんのり酸味の利いたライ麦パンに、4時間以上白ワインで煮込んだ猪肉のリエットをサンドして、その上に、チーズをのせて焼き上げます。

5/5に開催された「いんのしマルシェ」で出品して、好評いただきました。
美味しいといって、イベント内でリピート買いしてくださるお客様も数名いました。
猪肉の良質な脂と、パンの甘みが絶妙にマッチした一品です。


このホットサンドの他にも、オーブンを使ってその場で焼きあがる商品を2つ提供しました。

1つは、地エビのグラタンパン。
木次乳業の牛乳と、スペイン産のオーガニックオリーブオイルで作ったベシャメルソースをパンに塗って、その上に、瀬戸内海屈指の漁師町宮窪産の地エビを使った1品です。

しっかりと味の主張がある地エビと、優しいベシャメルソースの相性は抜群です。



同じタイプのパンで、地鶏の讃岐コーチンや、大山鶏を使ったグラタンパンも出品しました。

みなさんお肉の方が好きかなと思いきや、地エビの方が評判がよかったです。
宮窪の地エビは最高に美味しいですからね^^


オーブンを使ったパンだけではなく、島の魚介や卵、野菜をふんだんに使ったサンドウィッチも色々と作りました。


猪肉のリエットサンドです。キャロットラペと葉野菜を沢山サンドした1品です。

それから、5月3日の参道マーケットでは、過去最多の8種類のサンドウィッチを作りました。
上の猪肉リエットサンドに加えて下の7品!


真鯛のフライとタルタルソース
讃岐コーチンのからあげとタルタルソース
地魚のアップルビネガーマリネ
キスのセモリナ粉揚げとタルタルソース
黒鯛の素揚げの甘酢漬け
有機農家の平飼いたまごのコッペパン
平飼い卵のカスタードクリームコッペ

パン屋を開業したら、こんな感じで色んなコッペパンが並んでいたら楽しいですよね。

コッペパンには、北海道産のさくらんぼの酵母で作った食パン生地を使っています。ほんのり甘味のある生地はどんな具材にもマッチします。

一度にこれだけの品数をそろえるのは結構ハードルが高いのですけど、季節の魚や野菜を使ったサンドを最低でも3-4種類扱えたらいいなと思ってます。

お食事コッペパンとして、魚や肉を使った商品人気がありました。でも、やっぱり一番人気はクリームコッペパン。クリームパンは定番商品として開発していきます!