5月に入って、気温20度~25度で、ほどよく湿度があって、発酵にはよい季節到来です。ここのところ、美味しいパンが焼けてまして、焼くたびに「今回が今までで一番美味しい!」と思ってます。
写真に写るパンの表情もよくなっている気がしてます。定番のライ麦10%ブレッドです↓
パンを焼く手法をちょっとづつ改良してまして、「これが正解かもな」と思うことがいくつか見つかったので、ご紹介しておきます。
まず、酵母の管理についてです。
私のパンは、ミカンから野生の酵母を培養して、その酵母菌に粉と水を栄養して与えながら、管理しています。これはハードルヴァンと言われるパン種です。かれこれ1年半以上発酵し続けている種です。かなり安定して、強くなっていると思います。
ルヴァン種は水分量が100%以上あるなど、液状のドロドロな状態↓で管理している方が多いです。
これは「リキッドルヴァン」と呼ばれてまして、全粒粉を入れる場合が多いので、ちょっと灰色がかってます。
一方、私のルヴァン種は、全粒粉ではなく、強力粉を使っているのが特徴です。水分量も粉に対して60%しか入っていません。なので見た目も白くて、パン生地のようにふっくらしています。中種のような見た目です。
パンの教本を読んでいると、大抵の場合はリキッドルヴァンが紹介されているので、ハードルヴァンでパンを焼くのはちょっと珍しいのかもしれないです。
ハードルヴァンの特徴として、私が理解したのは下記の2点です。
・酸味の管理が、リキッドに比べると容易
・酵母は、ミキシングをしてグルテン形成させているのでふっくらしたパンが焼ける
(リキッドルヴァンを使うことに比べてパンの骨格がしっかりできる)
ルヴァン種のパンは乳酸菌のお陰で旨みが強くなる一方で、独特の酸味を持ちます。
私はこの酸味があんまり得意ではなくて、できる限り抑えたいと思ってます。
リキッドルヴァンで管理していると、どうしても酸味がでる傾向が強くなりました。発酵時間と温度、低温保存の方法で調整すれば、酸味の管理ができるようですけど、3日間冷蔵庫で酵母を保存する自分にとっては、リキッドルヴァンで酸味を抑えるのが難しかったのです。
一方ハードルヴァンは3-4日冷蔵庫に入れておいてもそこまで酸味が強くなりません。。。水分量と乳酸発酵には関係がるのかもしれないですね。
家庭用のミキサーで
粉100
水60
発酵種100
という割合で捏ねて、管理しています。
ミキシングすると、パンの骨格形成に寄与する「グルテン」ができます。この酵母の段階でグルテン形成をすることで、焼成したパンのボリューム(ふっくら焼く)を出すことができるのです。全粒粉のふすまはグルテン形成を阻害するらしいので、酵母は強力粉で育ててます。
リキッドルヴァンで焼くパンは、食感が重たくなる傾向にあるので、ルヴァン種を使っているといいながら、ドライイーストを添加してボリュームを出しているパン屋さんも多いのが現状です。
ハードルヴァンでパンを焼くと、ドライイーストを入れなくても、ふっくらしたパンが焼けます。
それから最近気づいた重要な発見は、ルヴァン種を発酵させたら、一晩冷蔵庫で寝かした方が圧倒的に香りがよくなるということです。味わいもよくなります。
前に何かで読んだことがあるのですが、発酵中に出てくるガスは健康的によくないようですし、発酵直後の香りはあまり食欲をそそるようなものではありません。
でも一晩寝かせて、酵母の匂いを嗅ぐと、ミカンのような柑橘の匂いがするのです。これは、酵母の匂いを嗅いだ人で、「わっ、みかんの香りがする!」と言った人が何人もいるので、酵母自体に柑橘的な要素があるのだと思ってます。
一番最初にミカンから酵母を起こして1年半以上みかんの皮とか果汁とか加えていないので、ミカンを感じる訳がない!と個人的には思っていたのですが、最近は「みかん酵母にはミカンを感じさせる何かが含まれているのだ」と思うようになりました。
これは、これまで色んな酵母菌(ホシノ、アコ、白神こだま酵母、とかち野、サフ等)を使う中で、それぞれに違った香りを持っていることからも、ミカン酵母には固有の香りがあるのだと確信してます。
ちょっとマニアックなことを書きましたので、意味不明な部分もあるかもしれませんが、パンと酵母の関係にご興味がある方は、「料理通信6月号」↓を読むことをおススメします。
日本の名だたるパン屋さんが、写真付きで発酵のプロセスを紹介しているセンセーショナルな内容になっています。
これを読むと、製パン技術とか、酵母の管理方法がオープンソース化しているように感じます。IT技術と同様に、オープンソース化しはじめると、そこからの技術革新とか、普及率とか格段に上がっていくと思うので、まだ日本ではマイナーなルヴァン種を使ったパンが一般的に受け入れられるようになる時代は遠くはないでしょうね。
東京の老舗天然酵母パン「ルヴァン」の甲田さんが、ルヴァン種を使ったパンを日本で焼き始めたのが33年前。これ以上ないと思うパンが焼けるようになったら、自分のパンを持って甲田さんに会いに行くのです。。。甲田さんに会うのを勝手に想像して、ドキドキして、頑張ろうと思って。。。不思議な存在ですね^^
前にご紹介したブーランジェリ・ドリアンの田村さんも、ブリオッシュのレシピと作り方を惜しげもなく紹介されてます。
これから、日本のパン業界は益々盛り上がっていきますよ~!