そして、この研修に参加して、「発酵種アドバンスコース」というものがあることを知りました。レーズン種、酒種、発酵種、市販のホシノ天然酵母などを使ったパン作りを学べるコースです。
先日、この「発酵種アドバンスコース」に参加してきましたので、ご報告いたします。
まず、今回の研修は、座学が物凄く充実しておりました。コース全体の25%くらいが座学という感じ。
研修を主催する日本パン技術研究所は、日本のパン作りの中枢を担っている機関です。大手の製パンメーカー(山崎製パン等)の社員さんの多くもこの研修会に参加していまして、製パンに関する様々な研究が行われています。そこに蓄積されているデータは、小さなパン屋さんで収集できるようなレベルを遥かに超えています。
例えば、発酵種を管理する条件を、「水分量」「灰分」「温度」の色んな組み合わせで変えたときの発酵力、酸味や酸臭、味を比較するようなことは2-3通りであれば一般の人でもできると思いますが、こちらの研究所では37通りもの条件で試験したデータがあるのです。
このデータを貰えただけでも、参加した価値は十分にあります。
以前、「発酵(ルヴァン)種の管理」という記事のなかで、
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ハードルヴァンの特徴として、私が理解したのは下記の2点です。
・酸味の管理が、リキッドに比べると容易
・酵母は、ミキシングをしてグルテン形成させているのでふっくらしたパンが焼ける
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と書いておりましたが、これは、今回頂いたデータから正しかったことが分かりました。
何だか嬉しかったです。
これからは自信を持って、自分の発酵種の特徴をお話できます。
それから、発酵種には酵母菌の約1,000倍もの乳酸菌が含まれていることを知りました。
酵母菌と乳酸菌は、共生できるよい関係性がある微生物で、酵母が生成するアミノ酸が乳酸菌の活性に関わり、乳酸菌が生成するブドウ糖が、酵母の活性に関わっていることがわかっています。
発酵種で美味しくパンが焼けるのは、乳酸菌のお陰だったのです。
乳酸菌の種類とか、種類別の代謝経路とか、発酵過程での生成物質の特徴とか。。。もうマニアックすぎるんですけど、全部全部教えていただきました。
超絶楽しかった!!のです。
※この講習会の先生ではありませんが、習ったことに近しい内容の論文がありましたので、ご興味がある方はご覧くださいませ。
http://www.eiken.co.jp/modern_media/backnumber/pdf/2017_08/002.pdf
座学だけではなくて、実技↓も、とっても良かったです。
・多様な発酵種の特徴を活かしたパン作り
・自家製スターター調整実習
・欧州の伝統的な発酵種利用によるパン作り
・美味しさと合理性を追求したサワー種製パン
・各発酵条件で調整した発酵種の比較製パン実習
※日本パン技術研究所HPより
特に、欧州の伝統的な発酵種利用によるパン作り!講師は、元紀伊国屋フードセンターの小田嶋先生でした。
紀伊国屋の「ホップ種の食パン」の作り方を、種の起こし方から丁寧に教えてくださいました。小田嶋先生の製法は、非常に手間がかかることから現在の紀伊国屋では製法が変わり、味も変わってしまったようですが、この小田嶋先生のホップ種食パンは、香り、食感、味、どれを取っても、驚きと感動がありました。製パンの世界は、とっても広く、私はまだその世界のごく一部しか知らないのだなと感じたパンでもありました。
ホップ種の製法、写真で少しだけ雰囲気をお伝えしておきます。
ホッピーなパン、クラフトビールときっと相性がいいはずです。
この講習会では、伝統的な発酵種や、酒種を使ったパンを色々と習ったのですが、単一のレシピでパンを作るのではなく、イーストの添加量を変えたり、発酵種の種類を変えたり、座学で習った違いを実技で実践して確認するという内容になっていましたので、非常に深く理解ができたように思います。
基礎コースと違って、発酵種アドバンスコースにはランチがついてきました。これが、もうめちゃくちゃに美味しかったのです。
料理研究家のナガタユイさんが、本コースで作ったパンをベースにした昼食を提供してくださいました。コースが終わってすぐに、ナガタユイさんの著書「サンドイッチの発想と組み立て(誠文堂新光社)」を買いました。世界中のサンドイッチとそのレシピ、そして、パンと具材の組み合わせと相性が解説されています。
大三島産の食材を使ったサンドウィッチを開発している自分にとっては、とても有難い教本を得ました。
発酵種アドバンスコースに参加して、頭の中のモヤモヤがすっきり、技術的にも少し成長できたように思います!実際に、この研修に参加してから焼いたパンを食べた方々から、一皮むけたね!と嬉しい声をかけて頂いたので、きっと良くなっています^^