この写真の真ん中に移っている方は、井上好文さんという方で、調べてみたらなんと!私の教科書BREADの監修をされているお方でした。。。
井上さんは大変に情熱的な方で、日本のみならず海外を含めた製パン技術に精通されている日本のパン作りの第一人者です。
パン研修は、井上さんの講義から始まります。午前、午後とみっちり製パン理論を学びました。
・なぜパンが膨らむのか
・グルテンとはなにか
・成形による気泡構造の違い
・ショートニング効果
・生地の粘弾性
・パンチが気泡構造に及ぼす影響
・成形と気泡のキメの細かさの関係
・生地改良材(イーストフード)とは何か
などなど
この講座で学んだことは、「パン入門 井上好文著」に書いてありますので、ご興味がある方は読んでみてください。とても勉強になります。
講義の内容と直接的に関係のないことで、
パン研修に参加して、これだけは書いておきたいということを書いておきますね。
それは「ショートニング」についてです。
今回習ったパンの材料には、ショートニングが使われているものが殆どでした。粉量に対して3%~10%位のショートニングが入ってます。
こんなに多くのショートニングを入れるんだと驚いたのですが、それは下記のショートニング効果(窯の中でより膨らむ効果など)を期待してのことです。
「可塑性油脂(ショートニング)は、パン生地中にグルテン凝固物の表面にフィルム上に広がり、グルテン凝集物間のすべりをよくし、生地の柔軟性、伸展性を高める。また焼成工程におけるでんぷんの糊化を遅延する。その結果、ショートニングを配合した生地は、配合しない生地と比較して、作業性、機械耐性、そして、窯伸びが顕著に改善され、ボリュームが高くソフトな触感および食感のパンとなる。このような可塑性油脂の効果をショートニング効果と呼ぶ(パン入門/日本食糧新聞社)」
ショートニングを入れた生地は、確かにしっかりと窯の中で伸びます。自分の手法では上のような高さのあるパンは焼けません。。。同じような効果は、サラダ油のような液状油脂では期待できないそうです。
大手製パンメーカーにとっては、工場で大きな機械を使い、均質で、日本人が求めるソフトで柔らかい食パンを作るためショートニングは必要不可欠な原材料なのです。
スーパー、コンビニで売られているパンの原材料を見ていただければ、ショートニングが入っていないパンを探す方が困難です。おそらく世の中に存在しているパン屋さんの大多数はショートニングを使っていると思います。
ショートニング。。。う~ん
あんまりよい噂を聞かないですよね。
なぜ良くないかといえば、「トランス脂肪酸」が多く含まれているからです。
農水省が調べたデータによれば、ショートニングの最大30%程度がトランス脂肪酸です。
ショートニングは物凄い量のトランス脂肪酸を含んでいるのです。。。
このトランス脂肪酸が入った食品を、アメリカ政府は2018年までに原則禁止すると言っています。ヨーロッパでも規制がかかっています。
日本の農水省はトランス脂肪酸について下記のように言っています。
「トランス脂肪酸については、食品からとる必要がないと考えられており、むしろ、とりすぎた場合の健康への悪影響が注目されています。具体的には、トランス脂肪酸をとる量が多いと、血液中のLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が増えて、一方、HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)が減ることが報告されています。日常的にトランス脂肪酸を多くとりすぎている場合には、少ない場合と比較して心臓病のリスクを高めることが示されています。」
パンを食べて、悪玉コレステロールが上がり、心臓病のリスクが上がるなんて誰も想像できませんよね。。。アルツハイマーのリスクが上がるという研究結果もあります。
もちろん、スーパーやコンビニのパンを食べたからと言って、すぐに病気になったりするわけではないですし、過剰に警戒する必要はないと思うのですけど。。。
正直ショックでした。。。
なんでこんなにショートニング入れるんだよ!!と思いました。
悲しいです。。。
日本政府はトランス脂肪酸を規制するつもりはないようですし、お菓子や揚げ物など、ありとあらゆる食品にショートニングを使っています。
パン研修で学んだ良いこと色々ありましたし、参加できて本当によかったと思っています。でも、ショートニングについては見過ごせなかったです。これから、製パン業界に携わるうえで、ショートニングは気になり続けるでしょうね。
僕は、パンを焼く型に塗る用にトランス脂肪酸フリーのオーガニックショートニングを使っていました。でも今後は菜種油に切り替えようと思ってます。